vol.2
長くゆっくり滞在できる、くつろげる空間に
道の駅川場田園プラザ in 群馬
道の駅川場田園プラザ※(三条印刷株式会社撮影)
土木学会デザイン賞2017 奨励賞を受賞
公益社団法人土木学会景観デザイン委員会が主催する、2017年度の土木学会デザイン賞において、道の駅川場田園プラザが奨励賞を受賞した。(http://design-prize.sakura.ne.jp/archives/result/899)
土木学会デザイン賞は、広く土木構造物や公共的な空間を対象に「技術と造形が調和したデザイン」「時間の蓄積に耐えるデザイン」「社会制度や仕組みのデザイン」「豊かな公共性を有するデザイン」「地域の生活・文化創造に向けたデザイン」といった点を評価の視点として選考される。通常は単独の建物を対象に評価されるが、道の駅川場田園プラザは「来訪者への心遣いが感じられ、全体がくつろげる空間になっている(土木学会デザイン賞ホームページ 講評より抜粋)」点が特に評価され、施設全体を対象としての受賞となった。
そこで今回は、道の駅川場田園プラザの、空間としての魅力を、3つのポイントで見ていく。
01広場を中心として回遊できる施設
道の駅の鳥瞰写真※(三条印刷株式会社撮影)
施設の案内図(道の駅川場田園プラザホームページより)
道の駅は複数の建物で構成されている。その中心には広場があり、来訪者は広場を中心に休憩をしながら、施設内を回遊することができる。高齢者や子どもたちと訪れても、広場の休憩場所を拠点に、それぞれの過ごし方で楽しめる。
02非日常感と安心感を演出する建物群
広場を囲むように配置される建物群
山々の姿も借景として楽しめるように計算されている※
伝統的な農家建築をモチーフにした建物群は、東側、北側の車道と駐車場への視線を遮るように、そして、広場を囲むように配置されている。これによって、来訪者は駐車場や車道といった日常的な光景から距離を置くことができ、旅の非日常感と、囲まれていることによる安心感を受ける。
03長時間滞在できる道の駅
こういった休憩場所が至るところにある
レストランなどにあるテラス席も十分な席数
施設内にはミルク工房、ミート工房、ファーマーズマーケット、レストラン、ブルーベリー公園などがあり、一日中楽しめる。歩き疲れたら、広場の芝生やテラス席の他、施設内の各所にベンチなどもある。広場は日よけや木陰も多く、ゆっくり休憩するのに適している。広場には池があり、そこに架かる木橋から眺める水鳥の泳ぐ姿も来訪者を癒す光景だ。また、授乳室も複数あるため、赤ちゃんを連れた家族づれも安心してくつろげる。
来訪者への心遣いを感じる、くつろげる空間
スタッフの提案で実現したハワイをイメージしたソファ
平日の日中でも多くの人が思い思いに過ごす
通常、道の駅は、ある程度の来場者を見込める場所に計画することが多い。しかし道の駅川場田園プラザは、人口3,500人ほどの山村にあり、山間の行き止まりのような場所で、周囲に強力な観光資源もなく、交通量も少ない県道沿いという条件のもとで始まった。「何もしなければお客さんは来ない」という厳しい状況の中で、顧客満足度を上げることを第一に考えてきた。そのため、これまで見てきたように、建物や空間づくりにも随所に来訪者への心遣いが込められている。四半世紀にわたる来訪者のための様々な取り組みの結果、道の駅川場田園プラザは悪条件を克服し、今では長時間くつろげる道の駅として全国的にも有名になった。
来訪者が途切れることはなく、道の駅川場田園プラザには、年間180万人もの人が訪れる。そのうち7割が首都圏からの来訪者であり、さらにそのうち4割が年間3回以上訪れる、いわば「ヘビーリピーター」であるという。
※印の写真は、土木学会デザイン賞ホームページ(http://design-prize.sakura.ne.jp/archives/result/899)より。