道の駅とおもてなし(満足度向上に向けて)
外出先で気になることといえば「トイレ」を挙げる人も多いだろう。
公共のトイレは特に、不特定多数が利用するだけにその清潔さは重要だ。
今回、取材した駅は、トイレは、非常にきれいに改修されており、取材後に築年数を聞いて驚いたほどだ。
トイレがきれいだと、それが入っている建物全体までも「きれい」「新しい」という印象を受ける。
以下は民間会社が独自に行ったアンケートの結果(※)である。この結果から、快適さが購入意欲やリピート率に影響していることがわかる。
あなたにとって、快適なトイレが
交通施設にあった場合、その施設で
買い物をしようと思いますか?
7割以上の利用者が快適なトイレだと
買い物をしようと思う傾向
【コメント】
- ●トイレが目的であっても買い物をしてしまうことがある(40代女性)
- ●トイレきれいなところがいい。少し遠くにいってでもキレイなところ(50代女性)
- ●トイレは基本大切(70代男性)
あなたにとって、快適なトイレが
交通施設にあった場合、その施設を
また利用しようと思いますか?
8割以上の利用者が快適なトイレだと
また利用しようと思う傾向
【コメント】
- ●基準になる。トイレが休憩場所を選ぶ(60代女性)
- ●記憶に残る。決めている(70代男性他)
- ●汚いところには行かない。コンビニとかもあるし(30代女性)
※TOTO 某交通施設調査(平成29年5月)より
千葉県が取り組む観光地整備事業
現在、千葉県では観光客用のトイレの整備に取り組んでいる。これまで、民間事業者・各種団体が設置する観光客が自由に利用できるトイレを対象に、200カ所近く助成を行ってきた。 助成を利用して多くの道の駅もトイレの整備を行ったが、その中で今回は南房総市の3つの道の駅のトイレ整備状況を取材した。
道の駅とみうら「枇杷倶楽部」
トイレ以外にも、授乳室などを整備して、
お客様にもっと気持ちよく
使っていただけるように。
鈴木 賢二 駅長
道の駅外観
びわを使ったお土産品の数々
花売場も充実の品揃え
平成5年、千葉県で最初に登録された道の駅とみうら「枇杷倶楽部」。名産のびわを加工したお土産品や、地元で栽培される花などが人気の道の駅だ。
トイレに関しては、1年中花を飾り、オープン当初はきれいなトイレとして評判が高かったそうだ。しかし、オープンから25年が経過し、部品の劣化、汚れなどが目立つ様になり、改修の必要性が出てきていた。
そこで、平成27年に県の助成を利用して、内トイレと外トイレを改修した。汚れたり、劣化した部分を補修した上で、内トイレの内壁、外トイレの内外壁も改修した。トイレの内壁には木を用い、明るく温もりのある印象に。また、要望の高かった便器の洋式化も行った。
改修では温もりのある木材を使用
トイレ内にも花が飾られる
木材と花で温かく明るい雰囲気
女子トイレののれんは極楽鳥花がモチーフ
鈴木賢二 駅長によると改修後は、トイレから出てきた人が「すごくきれいなトイレだった」と話す声もよく聞かれるようになったとのこと。
トイレには今でも1年中花が飾られている。トイレが明るくなったので、以前よりも花が映えるようになった。
「トイレ以外にも、授乳室などを整備して、これからもお客様がもっと気持ちよく使える施設にしていきたいと考えています。(鈴木駅長)」
道の駅三芳村「鄙(ひな)の里」
お客様に快適に過ごしてもらうため、
不便がないか、
こまめに見回っています。
亀田 利也 駅長
道の駅外観
名産の「三芳の牛乳」
「三芳の牛乳」を使ったお土産品たち
南房総市三芳地区産、成分無調整の新鮮な牛乳「三芳の牛乳」が評判の高い、道の駅三芳村「鄙の里」。前述の道の駅とみうら「枇杷倶楽部」に次いで、千葉県で2番目に登録された道の駅でもある。
18年ほど前に建てられたというこの道の駅のトイレは、コンクリートの打ちっ放しで、今見てもそれだけの年月を経たとは思えないデザイン。おしゃれなトイレとしても有名だ。男子トイレの便器はプライバシーに配慮した並びで配置され、女子トイレには化粧直しや身だしなみを整えるのに便利な非常に大きな鏡がある。そして男女トイレとは別に、子ども専用のトイレも備えている。
隣が気にならないレイアウト
洗面台も個別
女子トイレには大きな鏡
改修で和式から洋式に変更
平成26年に、このトイレも県の助成を利用して改修を行うことになった。便器の多くを和式から洋式に変更し、温水洗浄便座も付けた。「デザイン重視の設計だったため、メンテナンスがしづらいという問題点もありましたが、今回の改修で、洗浄水のバルブなどを交換しやすい部品に替えることもできました。(亀田利也 駅長)」
トイレなど継続的に使い続ける施設については、メンテナンスの問題もついてくる。メンテナンスをしやすくすることで、お客様にとっては修理のために使用できない期間が短くなり、道の駅側にとってはコストを圧縮できるメリットがある。また、亀田駅長によると、トイレットペーパーなどの備品もこまめに見回って補充をし、お客様が快適に利用できるよう心がけているそうだ。
道の駅ちくら・潮風王国
トイレに関しては、全従業員がそれぞれ、
少しでも気になったら
清掃するようにしています。
宇畑延輝 支配人
道の駅外観
建物の中央部分にある巨大な生け簀
生け簀にはタラバガニも
地中海をイメージしたという建物の中に入ると、中央に大きな生け簀(いけす)。そこでは生きのいい魚や貝、そしてカニやエビまで、新鮮なまま買うことができる。海の幸を十分に満喫できる道の駅だ。
利用客のおよそ7割が観光客だというここでは、トイレの需要が非常に高い。駅舎とともに20年ほど経過した内トイレは「少しずつリフォームを行ってきましたが、それでも『使いづらい』という苦情がありました。(宇畑延輝 支配人)」
今年の2月に改修が終わったばかり
壁は塗り壁風に
こちらも女子トイレには大きな鏡
床は汚れが目立たない
そこで、昨年12月から今年の2月にかけて、県の助成と市の予算で全面的にトイレの改修を行った。
建物のデザインに合わせて、ヨーロッパや地中海をイメージ。塗り壁風に内壁を塗装し直し、海辺のため砂や泥が付きやすい床は、汚れが目立たないものに変更した。観光バスが来ると混雑してしまうため、男女とも便器を1つずつ増設。改修後は、前のトイレを知っているお客様からもとても好評だという。
「専門の清掃スタッフはいますが、トイレに関しては全従業員、それこそテナントの従業員も含めて、少しでも気になったら清掃するようにしています。(宇畑支配人)」
「おもてなし」としてのトイレ
国土交通省が平成28年に実施したアンケート調査(*1)によると、男女とも駅や交通機関など外出先のトイレに対する不満の上位には「清潔感がない」、「清掃が行き届いていない」が挙げられている。観光地でのトイレの印象は、観光地自体の印象も大きく左右しかねない。
その地域の玄関口、顔としての役割を持つ道の駅では特に「おもてなしの一つ」としてトイレは非常に重要だ。
「道の駅」の初回登録から25年。道の駅黎明期から長年利用客を支えてきた施設は、改修の時期を迎える。千葉県だけではなく、多くの自治体で今後、こういった取り組みが広がっていくことが望まれる。
*1:国土交通省インターネットモニターアンケート「日常でよく利用するトイレに関するアンケート調査」(調査時期:平成28年12月9日〜12月22日)